『神道大系』のご案内
『神道大系』・『続神道大系』の頒布にあたって
財団法人神道大系編纂会は、会長故松下幸之助氏(前松下電器産業株式会社創業者、現パナソニック株式会社)のもとで、昭和五十年十一月に発足、会長松下幸之助氏の日本人の精神的基盤の構築への強い信念が財界、学界、神社界、その他各界を動かし、格別な御理解と筆舌に尽し難い御協力を得て、『神道大系』、『続神道大系』、付属書を合せて百八十一巻の編纂刊行をなし、平成二十年十一月、文部科学大臣より解散認可となりました。
精興社は財団法人神道大系編纂会と、編纂会発足当初から、三十有余年にわたり、その制作に従事して参りました。財団の結了後、斯界の各方面から、解散を惜しむ声があり、『神道大系』頒布への強い要望が沸き上りました。幸い財団法人神道大系編纂会のご理解をいただき、弊社は各界の希望に応え、斯道の発展に寄与するため、微力ではありますが、『神道大系』が末永く日本民族の財産として、国民が共有し、さらに諸外国の日本文化研究の一助とし、財団法人神道大系編纂会の志を大切に、頒布のお手伝いをさせていただきます。
株式会社 精興社
代表取締役 白井肇
日本古来の伝統精神を求めて(『神道大系』刊行発刊の辞より)
戦後三十余年。あの荒廃した国土のなかから立ち上がって、お互い日本人は見事に経済的復興をなしとげ、アメリカ、西ドイツとともに、自由主義諸国におけるリーダーとしての栄誉ある責任を求められるまでになりました。その偉業は、まさに世界の驚嘆するところでありますが、かえりみてその精神的復興、再建を考えますとき、今日、お互いに世界の師表として誇るべき姿になっているとは決して言えないのであります。
その原因はいろいろありましょうが、根本的には、二千年の歴史と伝統に育まれた日本人本来のすぐれた精神的基盤を見失っているところにあると思います。日本人がその本来の姿を見失って、真に世界に貢献するということはできません。まして、来るべき二十一世紀を目ざして、物心ともに世界の繁栄に寄与することを念願するとき、私どもは、長い歴史のうちに先人が創造してきた貴重な精神的遺産を、もう一度、根底から見直すことが、何よりも大切であると思います。なかでも神道と呼ばれるものは、日本人固有の精神的所産であり、日本人としてのいわば魂の原点がここにひそんでいるとも言えましょう。思えば、東洋思想の根源になっているものをみると、儒教には古来おびただしい幾多の叢書類がありますし、仏教にも『大蔵経』があり、また道教にも『道蔵』というものがあります。しかるに、神道には、まことに残念ながらこうした永遠に残る研究著作の大集成がなされてこなかったのであります。日本の国として、また日本人として、これはまことに遺憾なことで、いつかは誰かが手をそめなければならないことでありました。
その意味において、かつて文部省においては、政府事業として、国民精神文化研究所に「神道大系」の編纂、刊行を計画させていたのですが、敗戦の混乱とともにそれが中断され、再建の機もないまま今日に立ち至ってしまいました。まことに惜しむべきことであります。
ここに私どもが微力をもかえりみず、あえて『神道大系』の編纂、刊行を発意いたしましたのは、これ以上放置していたのでは、日本の将来にもかかわることを憂慮したからであります。したがって、主としてさきの政府事業による計画案にもとづき、それに多少の修訂を加え、時代の進運にも適合するようにしたのですが、これはいわば国家のなすべき事業を、民間有志の手によって行おうとするものであります。それだけに、容易ならぬ事業であることが痛感されますが、どうかこの規模雄大な国民的一大事業が、子々孫々にわたる国家百年の計として、見事完遂されますよう、私どもの意のあるところをおくみとり頂き、各位の格別のご理解と特別のご協力を心からお願いしてやまない次第であります。